「同じ一族なのに、いじめられてたってこと?」

「うーん。いじめっていうより、〝怖がられてた〟が正しいかなぁ? でもわたしの力(・・・・・)に興味を持った葛の葉様がわたしを暗部として取り立ててくださったら、それもピタリと収まったの。だからわたしは葛の葉様に多大な恩がある」

「…………」


 朱音ちゃんが半妖。

 私達はどこか似ているって以前から思っていたけど、もしかして同じ半妖ってことも関係していたのだろうか?


「で……でも、じゃあ待って! あの当主の直属の暗部ってことは、朱音ちゃんと私が出会ったのは、九条くんが突然いなくなったのは、全部――」


 そこまで考えた時、冷え切っていた両手が温かく柔らかいものに包まれる。見ればいつの間にか私の腕を掴んでいた朱音ちゃんの手は、私の両手を包み込んでいた。


「朱音ちゃん」

「あのね、まふゆちゃん。わたしのしたことは許さなくていい。だけど聞いてほしいの、わたしの話を」

「…………」


 真剣な表情で言う朱音ちゃんに私がこくんと頷くと、ふっと表情を緩めて、彼女は「ありがとう」と笑う。


「わたしが葛の葉様に与えられた任務は、神琴(みこと)様の監視。わたしは幼い頃から、ずっと彼を監視していたの。彼に何かあれば逐一報告するようにとも命じられていた」

「監視に、報告……」


 そっか、だからあの当主は学内のことを把握していたんだ。そして恐らく、私が雪女の半妖だと当主に伝えたのは――。


「うん、わたしだよ。まふゆちゃんがあの日(・・・)神琴様を探して保健室に来た時、わたしもあそこで神琴様を監視していたの」

「えっ……? 嘘っ、あの場に!?」


 私と九条くん以外の人の気配なんて、あの時まるでしなかった……!
 驚きに目を見開いて朱音ちゃんを凝視すれば、朱音ちゃんはどこか自嘲気味に笑んだ。