「…………?」
女性が去り室内をキョロキョロ見渡していると、部屋の奥が壁ではなく、御簾で区切られていることに気づいた。
何か意味があるのだろうか? なんとなく興味を惹かれて、私はどうにか御簾の先が見えないものかと目を凝らす。
「茶をお持ちしました」
「っ……!?」
するとその時、いきなり音も無く襖が開いて、心臓が飛び出しそうになった。どうやらさっきの狐面の女性が、お茶を持って来てくれたようだ。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
バクバクとまだ心臓が激しい音を立てる私の目の前に、高級そうな茶器に入れられた緑茶と、美しい花を模した上生菓子が並べられる。
そうして全員に配り終えると、また狐面の女性は出て行ってしまった。
「…………ごくり」
あ、いかん。喉が鳴った。瞬間、左右から呆れたような視線を感じる。
だってだって! こんな高級そうなものを口にする機会なんて庶民にはそうそうないし、是非食べてみたいじゃないか!!
そろりと左側を伺うと、目が合った雨美くんに咎めるような視線を向けられてしまう。うう、分かってるよ。何が入っているか、分かったもんじゃないって言いたいんでしょ! 仕方ない、勿体無いがここは諦めよう……。
ついでに右側もチラッと見ると、夜鳥くんと目が合ってしまった。なんだその、いかにもバカを見たみたいな表情は? 夜鳥くんの癖に生意気だぞ! そう言ってやりたいが、バカにされる原因は私にあるので、今日のところは見逃すことにしよう。
ちなみに既にお気づきだと思うが、屋敷の中に入ってから私達は全く会話をしていない。これはもちろん意図的である。
なにせこの屋敷の雰囲気は異様だ。これだけ広い建物内に、さっきの狐面の女性以外の気配が全くしないのである。こんな物音ひとつしないところでいつもの調子でしゃべれば、恐らく屋敷中に会話が筒抜けになってしまう。
九条家のご当主に関わる話の真偽は不明ではあるが、万が一ということもあるので、迂闊な言動は慎んでいた。
「ふぅ……」
それにしても、ずっと正座するの辛いなぁ。ご当主様とやらは、いつになったら現れるんだろう? 早く九条くんに会って連れて帰りたい……。
そう考えて、私が溜息をついた時だった。
――ボーンボーン、ボンボンボン。
「!!?」
