「そうだよ! 学期末テストだってまだ終わってないんだから、約束したのに勝ち逃げなんて絶対に許さないっ!!」


 残っているソーダを一気に飲んで、ダンッと勢いよく机に置く。よしっ、気合い入った!!
 そうして私は目の前の一人ひとりと視線を合わせて、軽く息を吸う。


「雨美くん、夜鳥くん、木綿先生。今日の生徒会は校外活動です。目的は九条くんの奪還。目的地は九条家。みんなの言う通り簡単なことじゃないって分かってる。でも、私はまだ九条くんと学校に通いたい! だから……、だから私と一緒に九条家に行ってくれませんか……!!」


 そのまま勢いよく頭を下げる。するといきなりガシッと強い力で頭を掴まれて、私は悲鳴を上げた。


「いだだだだだだっ!?」

「ったく、水臭ぇ! ほんっと水臭ぇんだよ、お前」

「痛いっ! 痛いから放してーっ!!」


 涙目になって叫ぶと、呆れたように夜鳥くんが私の頭からようやく手を放す。うう、まだじんじんする。


「雪守ちゃん」

「へ?」


 頭をさすっていると声を掛けられて振り向けば、べコン! と、いい音が私のおでこから鳴った。


「痛ーいっ!!」

「全く、当然のことに頭なんて下げなくていいんだよ」


 うう、雨美くんお前もか。澄ました表情に恨めしい視線を送る。そしてハッと木綿先生を見て身構えれば、先生が吹き出した。


「あはは、僕は何もしないですよ。生徒を守るのは教師の務め。そして無理矢理退学させようとする理不尽な親と戦うのは教師の(さだ)めですからね。もちろんお供しますよ」


 そう優しげに微笑む木綿先生に、夜鳥くんが意地悪げに笑う。


「まぁ木綿に乗ってかねーと、日ぃ暮れちまうしな」

「乗り心地は最悪だけどねぇ」

「あ、私二度と乗りたくないって文化祭の時思った」

「寄ってたかって酷いぃー!!」


 みんなが口々に勝手なことを言う。
 てんでバラバラな性格で、いつだって自由気まま。

 でも思いは全員同じだった。


「さぁ行こう! 九条家へ!!」