雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



『まふゆ、いいこと? あんたが雪女の半妖だってことも、妖力を使えるってことも、ぜ~ったいに誰にも言っちゃダメよ』


 瞬間、その言葉が脳裏を(よぎ)らなかった訳じゃない。
 でも何故かこの時の私は、先生を呼ぶでもなく、病院に連れて行くでもなく、〝私が助けなきゃ!!〟と思ったのである。

 そしてこの判断が全てのはじまりだった。
 私は舐めていたのだ、この九条神琴という男を。

 ――半妖は妖怪と違って妖力が人間の気配に隠れてしまうので、一見すると人間にしか見えない。自分から正体を明かしたり、妖力を露わにしているところを見られでもしない限り、妖怪の血が混じっているとは気づかれない――。

 眠っていて意識がなく、しかも高熱にうなされていて、私のことなど考える余裕も無いだろう。そう私は判断した。


 ――甘かったが。


「――――っ!?」


 次の瞬間には私の視界は反転し、ベッドに仰向けになる。
 その拍子に、髪をまとめている雪の結晶を模した銀細工のバレッタが後頭部を押して、痛みに顔を(しか)めた。……が、


「今のって妖力だよね? もしかして雪守さんって……妖怪?」


 落ちてきた声に目を開けば、目の前には私に馬乗りになる絶世の美貌。


「あ……」


 強大な火の妖力を全身から迸らせながら、九条くんの金の瞳が私を捉え、本能的な恐怖にビクリと肩が跳ね上がった。

 あれ? もしかして私、詰んだ……?