「はぁっ、はぁっ!」
ザーザーと激しく降りしきる雨の中を、傘も差さずにがむしゃらに走る。バシャバシャと雨を跳ね、服が汚れるのも構わなかった。
どこに向かっているの?
会ったからってどうするの?
家の場所すら知らない癖に。
何も、九条くんのことを知らない癖に。
頭の中で渦巻く言葉を振り切るように、ひたすら走って、走って、そして――。
「まふゆっ!!」
名前を呼ばれ、びしょ濡れの私の腕を誰かに思いっきり引っ張られる。
「――――っ」
嘘。〝誰か〟なんかじゃない。
とてもよく知っていて、すごく会いたかった人――黒い傘を持って別れた時の制服姿のままの九条くんが、私の腕を掴んで驚いたように目を丸くしていた。
「こんな時間にずぶ濡れで走って……、一体何があったの……?」
「…………ぁ」
〝それはあなたを探していました〟なんて、馬鹿正直に言っていいのだろうか?
ジロジロとずぶ濡れの姿を見られれば、なんともきまりが悪い。
というか九条くん、ちゃんと帰って来たんだ。なぁんだ。じゃあもう少し部屋の前で待っていたら、ちゃんと会えてたんじゃん。
「……えと」
そう思うと自分の後先考えない行動が今更ながらに恥ずかしくなってきて、モゴモゴと話すことを躊躇ってしまう。
