「…………」
コンコン。
そうしてどれくらい扉を睨んでいただろうか?
ようやく勇気を振り絞ってノックをする。
「あれ……?」
しかし返事は無く、扉に耳を澄ませても、なんの物音もしない。どうやら寝てるとも違うようだ。
ガッカリしたようなホッとしたような、なんだか複雑な気持ちになる。
「もしかしてまだ戻ってない?」
屋敷にそのまま泊っていることも十分考えられる。ならここに立っていても仕方がない。
しかし集中が切れてしまって今から勉強する気にもなれないし、かと言って目が冴えて寝る気分にもなれなかった。
「…………」
ふと窓を見れば、外はザーザーと音を立てて雨が降りしきっている。
まだ降り止まないなら、明日も雨で確定だな。そんなことをぼんやりと考えながら、階段を降りていく。すると玄関まで来たところで、寮母さんに声を掛けられた。
「あら、まふゆちゃん。ソワソワして、こんな時間に何か探し物?」
「あはは……。いえ、探し物っていうか、九条くんはどこかなー? なんて思いまして……」
少々気恥ずかしくて、しどろもどろに答えれば、「そういえば」と寮母さんが首を傾げた。
「神琴くんなら今日は実家に行くから戻りは遅くなるとは聞いていたけど、確かにまだ戻って来てないね。外泊申請は出てなかったんだけどねぇ。うーん、実家には日ノ本高校に入学することを随分反対されたらしいし、もしかして引き留められているのかねぇ……?」
「え……?」
思いがけない言葉に、心臓がドクンと跳ねる。
もしかして最近の用事とはそれのことだろうか?
じゃあ九条くんは学校から入学を反対されていて、家からも入学を反対されていたの……?
知ってしまった事実に、ひとつの答えが脳裏をよぎる。
昨日は放課後にいなくなって、今日は半日。じゃあ明日は?
今日の別れ際、九条くんは何と言っていた?
『ごめんね。じゃあね、まふゆ』
――また明日とは言われなかった。
「――――っ」
「まふゆちゃんっ!!?」
寮母さんが叫んだのを遠くで聞きながら、私は突き動かされるように寮から飛び出した。
