ーーなんか、おかしい。
頭の中で警鐘が鳴る。
「邪魔者がいなくなって、よかったよ」
羽鳥くんは口角を上げるも、目元は笑っているように見えない。
「……あの時はごめん、けど、咲さんが悪いんだよ」
まだ腫れと赤みが残っている私の頬を撫でて、憎らしげに呟いた。
……あの時って、どういうこと……?
考えようとして、普段より低い今の羽鳥くんの声に聞き覚えがあることに気がついた。
あの時はあまりにも雰囲気が違ったから知らない人だと思ったけどーーまさか、私を襲った吸血鬼って。
「羽鳥くんが、あの時の吸血鬼……?」
「そうだよ。そこまで知ったら、わかるだろ? ーーお前の血、さっさと飲ませてもらうからな」
ーーこれが、羽鳥くんの本性だったんだ。
私は羽鳥くんの腕によって壁際に押しつけられてしまった。
首筋に、荒い呼吸がかかるのを感じる。
「……稀血じゃなかったら、お前みたいなのにいちいち構ったりしないのによ。下手に出てれば、調子乗りやがって」
「そ、んな……」
……そんなの、わかってたよ。
私になんか、価値はないって。
「あのヘラヘラした吸血鬼はどうした? 飽きられて捨てられたのか?」
「……そうだよ」
……なんかもう、どうでもいいや。
どうせ陸くんはもういないし、私なんかでも血に価値があるっていうなら、欲しい人にあげればいい。
「だからもう、いいよ。好きなだけ飲んで」
「……なんだよそれ、かわいくねぇな。けどお望み通り、吸い尽くしてやるよ」



