「あ、あはは……あの人は彼氏じゃないんだよ、そもそも。えと、スマホ出すね……」
鞄を漁って、スマホを家に忘れたことに気づいた。
「……あれっ? 嘘、また忘れちゃった……」
ここまで来ると、羽鳥くんとは連絡先を交換できない運命なんじゃないかとさえ思う。
「咲さん、意外と忘れ物するタイプ? 連絡先はまた今度でいいけど……スマホ、取りに帰るの?」
「うん……そうしようかな。ないと不便だし」
「それじゃ、一緒に歩いてもいい? 少し話そうよ」
「えっ、い、いいけど……」
……羽鳥くん、私のこと、好きなの?
ふいに湧いた疑問を、慌ててかき消す。
寂しいからって、自分に都合よく解釈するのはやめよう。
羽鳥くんは、コミュ力が高いだけだ。
うん、きっとそう。私に興味があるわけない。
他愛もない話をして歩いていると、すぐアパートに着いた。
「じゃあ、ちょっと持ってくるね」
羽鳥くんはニコリと笑って、玄関の前で軽く手を振る。
そして私は一人で部屋に入ったーーはずだった。
「えっ」
玄関のドアを閉めようとしたとき、羽鳥くんがドアを押さえる。
「やっぱり、中、入らせてよ」
私の返事も待たず、羽鳥くんは無理やり押し入ってきて、後ろ手に玄関のドアを閉める。
ーーカチャリ。
それから、鍵も。
「は、羽鳥くん?」



