私は、左の頬に思いっきり拳を受けた。
……脳が揺れるって、こんな感じなんだ。
なんか、耳鳴りまでするし。
ぜんぶスローモーションみたいに感じて、痛みが来るまでが意外と長い。
ふいに目がいった陸くんは、見たことのないほど真剣な表情を浮かべていた。
私を見て、困惑、心配ーーそれから男の人に、静かな怒りをこめた顔。
私のからだは陸くんが支えてくれたことで、衝撃で倒れることは免れた。
ーーそれにしても、頬がかなり痛い。
歯は折れてなさそうで助かったけど。
「あんた、自分が何したかわかってんの」
「は、そいつが自ら殴られに来たんだろ……吸血鬼守ろうとするとか、バカなんじゃねーの? 自分がただのエサってわかってないのかよ」
「そのうるせー口閉じろよ……それか、今すぐ話せなくしてやってもいいけど?」
陸くんが男の人に向けたのはーー拳銃だった。
「ーーは、はぁ? なんでそんなもの……」
「3秒だけ待ってやろうか? さん、にー、」
「や、やめろっ! クソっ……」
男の人は、踵を返して去っていく。
私が呆然とその背中を見送っていると、陸くんはその手から拳銃を落とした。
それから、私を抱きしめる。



