クズ吸血鬼を拾ったら




……背後から聞こえた、穏やかなのに冷たい、不思議な声色。


「ーー陸くん……」


振り向いて目が合った陸くんは私に微笑んで、私の肩を引き寄せた。

それによって手が引き離された男の人は、悔しそうに舌打ちをする。

陸くんは不満げな瞳で、そんな男の人を睨みつけた。


「……あんた、吸血鬼だよね」


ーーまさか、そんな。

吸血鬼なんて、ほんの数日前まで見たこともなかったのに。

こんな短期間で二人も出会ってしまうなんて。


「だからなんだよ、寄越せよ、その女! 稀血を独り占めするつもりか?」

「そーだよ。はじめから、俺のって言ってるじゃん」


……稀血、って、なんだろう。

話を聞いた印象だと、吸血鬼にとっては、なにかいいものなのかな。

で、私がその、稀血ってこと?


「なに、勝手なこと言ってんだ? だったら力ずくで奪ってやるよ!」


ーーそう言った男の人が、陸くんに殴りかかろうとして。

あろうことか私は、二人の間に飛び込んでしまった。


……ゲームのやりすぎか、漫画の読みすぎ、あるいは両方。

とにかく、何の力もないくせに、咄嗟に陸くんを守ろうとしてしまったんだ。


「咲っーー」