「いや、べつにーー」
陸くんは、言いよどむ私の手を引いた。
強引に、布団の中に引きずり込まれる。
「べつに? ふーん、なら、秘密ね」
「い、いじわるだ……」
「安心しなよ、今は咲ちゃんだけだから」
……私だけ、何?
私だけが、大事なごはん?
なんて聞けるわけもなく、陸くんの腕の中で縮こまる。
陸くんの距離の詰め方はどうかしてるけど、それを受け入れてる私も大概だ。
……絶対、好きになんか、ならない。
なったらダメだ、こんな人。
そんな気持ちとは裏腹に、陸くんの温もりの中で、重くなるまぶたを開いていられない。
ドキドキして、心地よくて、これじゃ勘違いしちゃうよ。
「……陸くん、明日は、帰ってね」
だから、これ以上、一緒にいたくない。
本当に好きになる前に、どうか私の前からいなくなってほしい。
陸くんは「おやすみ」とたった一言だけ呟いて。
ーーそれから私は、眠りに落ちた。
◇
朝、起きてーーなんだか、部屋が空っぽに感じた。
「……陸、くん?」
しんとした部屋には、私の声が響くだけ。



