「ま、待って、なに!?」
「何ってーー俺もお腹すいたから、俺は咲ちゃんからもらうんだけど」
そう言って首筋に噛みつこうとする陸くんの口を、精いっぱい伸ばした手のひらでふさぐ。
「ダメ!」
「……なんでよ。献血だよ献血。同じじゃん」
「だって、依存症になっちゃうんだよね!? 嫌だよ!」
「ははっ、俺、そんな下手くそじゃねーよ」
「下手とかそういう問題ーーなの?」
「そうだけど? あんたら人間はさ、吸血鬼のことなーんも知らないのに、怖がりすぎ」
確かに吸血鬼のことはよく知らない。
けど、だからこそ。
「……怖いよ、知らないことは」
「そう? でもさ、咲ちゃん、もう知ってるじゃん。血ぃ吸われんの、気持ちいいって」
陸くんは返事も待たず、私の首元に顔をうずめる。
それから、首筋を噛んだ。
昨日と同じ、小さな痛みと、気持ちよさ。
依存症にならないとか献血と同じとか、そんなことを言われると、拒否する理由を探しづらくなる。
……理由を探すって、なんだ?
それじゃまるで、本当は血を吸われるの、まんざらでもないみたいじゃない?
ーーそう思うと急に恥ずかしくなってきて、私はまた陸くんの顔を両手で押しのけた。



