このお兄さんーーもとい、陸さん? をどうしたものかと考えていると、ふいにテーブルの上が目についた。
「あ……あー!」
「うるさっ、なに?」
「プリン、食べました!?」
買うのもやっとな限定プリン、楽しみにとっておいたのに!
「えー? ダメだった?」
「だっ……ダメです! 普通、ダメでしょ!」
もはや普通とか言っても通じないか。
陸さんはわざとらしく頬をふくらませ、私のベッドに近づいた。
「そんなに食べたかった?」
「た、食べたかった……」
……なに、なんのつもりなの。
いちいちやることが読めなくて怖い。
陸さんは私の顔を覗き込んで、笑った。
「じゃ、はい、味見」
陸さんがそう言った次の瞬間ーー私は、キス、されていた。
しかも唇同士をくっつけるだけじゃない、フィクションでしか見たことないやつ。
し……舌……ほんとにやるんだ、こんなこと……?
自分がそんなことしているなんてどこか現実味がなくて、逆に冷静になれる気がする。
ーーいや、それは嘘かも。
息の仕方がわからない。いつ? 息継ぎ、いつ!?
顔を背けようにも、両耳のあたりを陸さんの手のひらにしっかり覆われていて逃げられない。
自分がこんなことしてる恥ずかしさと、息ができない苦しさで、頭がくらくらしてきた。
顔が紅潮するのが自分でもわかる。
……ああもう、耐えられない。
そう思った頃、私の口は呼吸することを許された。



