すぐにリビングに顔を出して、わたしの顔を見ると安堵の表情を見せる。

「お帰りなさい」

「ああ、学校はどうだ?」

「事件の事を聞いてくる人がいるけど、適当にあしらってる」

「そうか、嫌な思いをするなら学校を休んでいいからな」

「うん、ありがとう」

 あれだけ勉強しろと小言を言っていた父が、わたしの気を使う様子に心の中で笑ってしまった。

「わたし、お風呂入るから」

「ああ、俺は先に飯にしようかな」

 わたしはその場を離れて軽くシャワーを浴びてから自室に入ると、ベッドに横たわる。

 誘拐事件の噂が落ち着くまでは、もう少し非日常な生活が続くだろう。

 前みたいに退屈だけど平凡な日常に戻らないかと思いながら、わたしは眠りについた。