……今度はまともな人でありますように。

 わたしは心の中で祈りながら、倒れている男を起こした。

「ねぇ、起きて」

「……っ、誰です?」

 わたしが軽く揺すると、男はすぐに目を覚ましてわたしを見つめる。

 その視線にさらに顔が赤くなりそうになるが、今はそんなことをしている場合じゃないと、首を振って男に質問をした。

「良かった、目を覚まして。ねぇ、ここがどこか分かる?」

「いいえ。どこです、ここ?」

 わたしの言葉に男は瞬時に辺りを見るが、心当たりがないのかボソリと呟く。

「それが、わたしにも分からないんだ」

「え?」

「あ、あの。全員起こしましたよ」

 男の言葉に肩を落とすわたしに、最初に起こした女が声をかけてきた。

「ありがとう、えっと」

「あ、名乗っていませんでしたね。わたしは羽間(はざま)(ゆう)と言います」