「あんた、誰?」

 先程よりワントーン低い声でわたしに問いかける。

「それはわたしも聞きたい。あんた、誰なの?」

「いやいや、あんが先に答えてよ。星矢はどこ? まさかあんた、星矢を狙う泥棒猫?」

「違うし、そもそもその星矢って奴を知らない」

 星矢という男は知らないので、わたしは首を横に振りながら答える。

「はぁ? あんな素敵でイケてる星矢のこと知らないなんて、何様のつもり?」

 勝手に泥棒猫扱いされて誤解を解くため言ったのに、何キレてるんだか。

 まだ痛む頭がさらに痛みそうな気がしたけど、まだ起こしていない人がいるので、いまにもわたしを掴みかかりそうな勢いで文句を言う女を無視して再び起こす作業に戻る。

 次に目を付けた男は真面目な印象を持つ見た目だった。

 キッチリと着こなしている制服は、市内で一番偏差値の高い学校の物だった。

 サラサラの黒髪に整った顔立ちをしていて、わたしの好みに近い雰囲気に顔が微かに赤くなる。