「は、なんで手錠なんか持ってんだよ!」

 取り繕う必要はないのか、乱暴な口調になった植本を無視して手錠の片方をポールに繋げた。

「覚えてないの? みんなで防犯グッズを買いに行った時だよ」

 植本から少し離れてから冷ややかに見下ろす。

 鍵は学校に置いたままの鞄の中にあるから、取り外すのは不可能だ。

「外せ!」

「嫌だ。……アンタが先にわたしたちを殺そうとしたんだ。自業自得だよ」

 車内で次の駅に到着するアナウンスが流れる。

 電車のスピードが徐々に落ちていき、甲高いブレーキと共に停車すると、電車はゆっくりと開いていく。

 わたしは羽間を支えて下車していく。

 そして他の車両から大勢の乗客が我先にと下車していく。

「待て! これを外せ!」

 頭から脂汗を垂らしながら植本は叫ぶ。

 あの頭痛と吐き気で怒鳴れることには素直にすごいと思った。