「どけ」

 石井の側にいたわたしたちを、いつの間にか側に来た中川が命令した。

 わたしたちは素直に従い、石井から離れると、今度は中川が側にしゃがみ込んだ。

「おい、起きろよ。ルリカ」

 中川が声を掛けて肩を揺らすが、石井からの反応はない。

「他の奴にも迷惑かけてるだろ。ドッキリなんかやめてさっさと起きろ」

 中川は揺らす力を強くし、石井の体が激しく揺れる。

「やめてください、中川さん! 石井さんはもう……」

 さらに酷く揺らそうとする中川を、羽間が堪えるような声で制止する。

 羽間の言葉に中川はピタリと揺らすのを止めると、今度は自身の体を小刻み揺れている。

「……俺が悪かった。何の証拠もないのに、お前のことを疑って。謝るから、目を覚ましてくれ」

 その声は徐々に震えて小さくなり、中川の目から涙が溢れていた。

「なあ、ルリカ。起きろよ」

 中川がそう言って何度呼び掛けても、石井の反応がない。

「ルリカー‼︎」

 絶叫に近い中川の呼び掛けは、救急隊と警察が来るまで続いた。