何もない事に田山が顔を青ざめると、中川も不安を煽るような発言をする。

「誘拐って、うちビンボーだよ? まあ、可愛いから攫ったっていうなら分かるけど……」

「わたしも普通の一般家庭だよ。誘拐だったら、身代金を用意しろと言われても、大金なんて出せないって」

 石井がぶりっ子して自分の可愛さをアピールしているが、わたしは首を横に振って真面目に答える。

「家庭事情が関係ない誘拐って線はありませんか? 例えば、人身売買とか……?」

「じゃあ、この首輪は逃げた時に場所が特定するように付けた発信機ってこと⁉︎」

 羽間の物騒な言葉に田山が首輪を掴んで騒ぎたてる。

 キンキンとした金切り声が、いまだに痛む頭に響く。

「やめろ、頭の痛みが悪化するから騒ぎ立てるな」

 玉木は自分のこめかみあたりを押さえて、大きなため息をつく。

「田山さん、落ち着いてください。まだそうだと決まった訳じゃないのですから」

「そう、ね。騒いで悪かったわ」

 植本が宥めると、田山は少し顔を赤らめて静かになった。

 田山も植本のことが気になっているらしい。