エレオノールはぐっと唇を噛み締めると、村に向かって駆けだした。

 振り返ると、子竜はジークハルトにまとわりついて遊んでいる。甘えているといってもいい。

(連れて行かないって、約束したから……)

 一刻も早く大切なものを取りに行こうとするエレオノールだったが、村の門をくぐったところで不意に足を止めた。

(そういえばさっき、なんて名乗ってた? ――ジークハルト・フォン・ベルグ?)

 今、踏みしめている大地を領土とする帝国の名はベルグ帝国。

 ゆえに、それを姓とできるのはこの国の皇族だけである。

(じゃあ彼はこの国の皇子なの……?)