「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~

 腕の中の温かでやわらかな命に対して感じるのは、責任感ではなく母性だった。

(いつまでも逃げ切れるとは思えない。せめてあの人の手が届かない場所へ……)

 そこまで考えてから、ふとエレオノールは足を止めた。

 背後を見るも、ジークハルトが追ってきている気配はない。

(諦めてくれた……?)

 そう思ったのも束の間、子竜がひと際大きな鳴き声をあげる。

「みゃあ!」

 その瞬間、エレオノールの周囲に影が差した。

(なに――)

 太陽が雲で陰ったにしては違和感のある影の差し方を訝しみ、空を見上げる。

 すると頭上の影が濃くなり、エレオノールを包み込むように急接近した。