「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~

 長年待ち望んでいた孵化だが、さすがに状況を考えてほしい。

 そんなエレオノールの焦りなどお構いなしに、卵の亀裂が一層増していく。

「手を離せ」

「離すのはあなたのほうです!」

 この状況で一番かわいそうなのは村長だった。

 そもそもドラゴンという単語だって、なんの話だと思っていることだろう。

 やがて、お互いに一歩も譲ろうとしないふたりと、おろおろ見守るばかりの村長の前で、ついに卵の中身が姿を見せた。

「みゃあ!」

 子猫にしては甲高く、ざらついた鳴き声が張り詰めた空気を引き裂く。

「まあ、どうしましょう。なにも用意してないのに……!」