(本当の名前を言えなくてごめんなさい。でも私は、ただのエレオノールでいたい)
話し相手が卵だけでも、家族から虐げられ、使用人から嘲られていた頃よりはずっといい。
「ラス、か」
ジークハルトがつぶやくのを聞き、エレオノールの胸が小さく痛んだ。
(助けてくれた人を騙すなんて)
嘘ではないが真実でもない。ただ、騙しているという事実だけは間違いなかった。
「改めて、ラス。怪我の治療に対する礼をしたい。この辺りに住んでいるのか? だったら――」
「お気持ちだけいただいておきます。そもそも、私が助けてもらったのが先ですから」
後ろ髪を引かれる思いで、ジークハルトから一歩引く。
話し相手が卵だけでも、家族から虐げられ、使用人から嘲られていた頃よりはずっといい。
「ラス、か」
ジークハルトがつぶやくのを聞き、エレオノールの胸が小さく痛んだ。
(助けてくれた人を騙すなんて)
嘘ではないが真実でもない。ただ、騙しているという事実だけは間違いなかった。
「改めて、ラス。怪我の治療に対する礼をしたい。この辺りに住んでいるのか? だったら――」
「お気持ちだけいただいておきます。そもそも、私が助けてもらったのが先ですから」
後ろ髪を引かれる思いで、ジークハルトから一歩引く。

