ジークハルトにうまく利用されるのはまったくかまわないが、早くこの場を離れたくて仕方がない。
十年以上会っていない家族でも、彼らの存在を感じるだけで、エレオノールの胸のうちのやわらかい場所がちくちく刺激される。
「失礼ながら、そちらの女性はどちらの家門の出でしょうか? ベルグ帝国の貴族には何人も知り合いがおりますが、初めてお顔を拝見し――」
言いかけたラフィエット伯爵が、エレオノールの顔を見つめて怪訝な表情になる。
(わかるはずない、だって私を捨てたのは……)
「……エレオノール?」
ぽつりと言ったのは、ずっと黙っていた伯爵夫人だった。
「あなたなの?」
十年以上会っていない家族でも、彼らの存在を感じるだけで、エレオノールの胸のうちのやわらかい場所がちくちく刺激される。
「失礼ながら、そちらの女性はどちらの家門の出でしょうか? ベルグ帝国の貴族には何人も知り合いがおりますが、初めてお顔を拝見し――」
言いかけたラフィエット伯爵が、エレオノールの顔を見つめて怪訝な表情になる。
(わかるはずない、だって私を捨てたのは……)
「……エレオノール?」
ぽつりと言ったのは、ずっと黙っていた伯爵夫人だった。
「あなたなの?」

