「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~

 鼻を通って抜ける上品な酒の香り。舌の上でほどける温かな生地はしっとりとやわらかく、干しぶどうの甘みを吸ってえもいわれぬ味わいである。

 甘味とは非常に貴重なものだ。

 エレオノールもテレーのもとで花の蜜や凍った木の樹液を与えられたくらいで、加工品はほとんど口にしたことがない。

 食生活が改善して幾分ふっくらした顔が恍惚とするのを見て、ジークハルトが、くっと喉を鳴らして笑った。

「よほどうまかったらしいな」

「そんなに顔に出ていましたか……?」

「ここまで感情がわかりやすく顔に出る奴を初めて見た程度には」

 エレオノールは顔を真っ赤にして、口をもぐもぐさせながら下を向いた。