「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる～溺愛されて聖女の力が開花しました～

　胸の奥につきんと切ない痛みを感じ、エレオノールはきゅっと唇を引き結んだ。

　『ラス』というのはエルフが扱う古代語で”森”を意味する。

　テレーはエレオノールが親に捨てられるきっかけとなった深緑の瞳をことあるごとに褒め、『私も森の色が欲しかったな』と自分の青灰色の瞳を残念がった。

（テレーと別れて八年も経ったのに、まだ寂しくて、悲しい……）

　艶のない真っ白な髪と長い耳、そしてくすんだ青い瞳と温かな笑顔。

　大切なものをたくさんくれた育て親のすべてを、今も鮮明に思い出せる。

　季節がまた春に変わったことを実感したせいか、今日のエレオノールはいつもより感傷的だった。