「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~

 耳朶をくすぐる声に、テレーしか呼ばなかった名を囁かれた瞬間、エレオノールは胸にもどかしい疼きを感じた。

(本当の名前で呼ばれたい)

 親さえ呼ばなかった『エル』という愛称をジークハルトには許したくなる。

 エレオノールと呼ばれるのも、エルと呼ばれるのも、ラスと呼ばれるよりは幸せになれるように思えた。

「ジークハルト、さん」

「……ジークでいい。少なくとも俺しかいない時は」

 顔を上げてしまったエレオノールと、甘く囁いたジークハルトの顔が自然と近づく。

 吐いた息が短い距離で絡み合うのを感じ、エレオノールはジークハルトの肩口を掴んだ。