腕に痕が残るほどきつく握られていた手がようやく離れたかと思うと、エレオノールの身体は門の外へ放り出された。

 伯爵家の屋敷と外とを明確に分けたその門から追い出された理由には、悲しいことに覚えがある。

 彼女の母は、エレオノールを生んですぐに亡くなった。

 ラフィエット伯爵は自分に似ても似つかない容姿の娘を見て不貞の子だと決めつけ、潔白を証明する妻がいないために、その固まった考えをよりエスカレートさせていった。

 それでもまだ、有力な貴族との間を取り持つ政略結婚の駒として利用価値があると、今日までエレオノールを――娘に対してのものとは思えないひどい扱いとはいえ――育てていたのだが。