記憶を失う程度には普通の状態じゃなかったとわかっているから、自分で部屋に帰ってきたのではなく、誰かが助け出してくれたんじゃないかと思っているのだが、いまだにその相手が誰なのかわかっていない。

(ちゃんとお礼を言いたいのにな)

 倉庫から脱出した翌日に、エレオノールは件のメイドに会いに行った。

 エレオノールが倉庫にいることを知っているのは彼女だから、助けてくれたのももしかしたらと思ったのだが、どうやら違ったようだ。

 メイドは、エレオノールが開口一番に礼を言ったのを聞いてぎょっとしていた。