(見知らぬ場所での生活を強要されて不安だっただろうに)

 ジークハルトはリュースをあやしていた手をエレオノールの頬に滑らせた。

 抜けるような白い肌は陶器のようだが、今は褒め言葉にならない。それほどエレオノールの顔色は不健康さを示していた。

「……すまない」

 生きている人間とは思えないほど冷たい頬をなぞり、ジークハルトは唇を噛み締める。

 笑顔をもう一度見るどころか、怯えた泣き顔を見てしまったことが、ジークハルトの胸に苦い後悔を生んでいた。