それにもしもリヨン王国に留まれば、どこかでまたラフィエット伯爵と顔を合わせてしまうかもしれない。

そうなったら、葛藤しながらも最後に優しさを与えてくれたあの門衛に迷惑がかかるだろうと思い、エレオノールはひとり寂しく枯れた草を踏む。

キィキィと得体の知れない獣の声が響く森の中に、エレオノールの小柄な影が呑み込まれていく。

 その姿は数刻もしない間に完全に見えなくなった。