空気まで甘く香ると呼ばれる花の王国、リヨン。

 肥沃な土壌と温暖な気候から、大地の女神に愛されているとまで言われたこの国で、ひとりの少女が泣きじゃくっていた。

「お願い、捨てないで。いい子にするから……!」

 淡く薄い金髪に翠玉を思わせる瞳の少女は、名をエレオノール・レリア・ラフィエットといった。七歳にしては幼く小柄で、五歳くらいに見える。

 苛立ちを顔に浮かべて彼女を外へ引きずっていくラフィエット伯爵のひとり娘である。

 そう、昨日までは。

「もうお父様って呼ばないから……」

「もともとお前など私の娘ではない!」

「きゃあっ!」