「これ、もらってください」


「…こういうのはさ、卒業するほうがあげるんじゃないのかな」


青野がおもむろに差し出してきたのは、校章が入ったボタンで、学ランを見るとしっかり第2ボタンがなくなっていた。


「あと1年制服着るのにボタンないと困るよ」


「大丈夫です、先輩からボタンもらっておいたんで」


青野は私の右手にボタンを乗せると、大きな両手で包み込む。
本当に用意周到で抜け目ない。


「ありがと。
…じゃあ代わりに、このハンカチ持ってて」


ボタンを大事に胸ポケットにしまったあと、そう言ってさっきのハンカチを差し出すと、青野は目を丸くした。