急に、臣の匂いに包まれる。

少し遅れて、抱きしめられたんだって気づく。

臣の心臓がドキドキしてる。

どうして?

「……やめてよ」

「やだ」
ギュッて力を入れられる。

「好きな子がいるんでしょ……」

「いるよ」
「だったら——」

「なんでわかんないんだよ。侑莉に決まってるじゃん」

また、臣の言葉がわからない。
今度はほんとにわかんない。

「……え?」

「侑莉が俺を嫌いでも、俺は侑莉が好き」

そんなの嘘。だって

「わたし、見たよ」

「見た? 何を?」

「卒業式の前の日」

臣が一瞬ピクって反応したのがわかる。
ほら、やっぱり。

「臣、女の子と抱き合ってたでしょ?」