雨がいっそうひどくなる。オレは腕を伸ばし、自分の傘を彼女の体が入るようにさした。
途端に頭からびしょ濡れになる。彼女は信じられないものを見る目をこちらに向けた。
「なに……?」
「ちかちゃんだったらこうする」
その瞬間、彼女の目の色が変わった。乾いた笑い声が雨の音に混ざる。
「あは、ははは。よく知ってるね。そう。千花ちゃんはね、わたしが濡れていたら傘をさしてくれるし、わたしがいじめられてたら庇ってくれるし、わたしが辛かったらそばにいてくれるの。千花ちゃんってずっとそう。いい子で周りに好かれていつも堂々としてて運動もできてモテて、好かれて、褒められて……わたしはいつも脇役だった」
さし出した傘は彼女の手によってバシンッと音を立てて弾かれた。
オレは宙ぶらりんになった手と、うつむいたままの彼女を交互に見つめる。


