その顔は一瞬で切なそうな表情に切り替わり、彼女は言いづらそうに口を開いた。
「実はいままで黙ってたけど……忠告しておくね。千花ちゃんはやめたほうがいいよ。わたし昔から千花ちゃんに――いじめられてるの」
彼女はそう言って自身の制服を指さす。
「見て。制服びしょ濡れでしょ? 傘盗まれたの。千花ちゃんはいつもわたしの傘を盗るの。千花ちゃんは人気者だから誰にも言えなかった。信じてもらえないと思って。でも佐藤くんみたいないい人が騙されてるの見てもう黙っていられない。お願い佐藤くん……」
弱々しく語られる言葉にオレの思考は止まる。そして次の瞬間、腹の底から怒りが込み上げた。
「お前――どっち?」
「え?」
「オレを潰そうとしてんの? ちかちゃんを潰そうとしてんの?」
オレは理解した。目の前の女は嘘いつわりでちかちゃんを悪者にし、オレをちかちゃんから遠ざけようとしていると。
感情を抑えつけようとすると声も抑揚がなくなる。
彼女はそんなオレに目を瞬かせた。そして予定外のことが起きているかのように顔をしかめる。


