「それはね、わかったからだよ」
「わかった?」
「オレは家の目の届かないところで人間関係を築かないといけないんだって。そうしないと一生あの家に縛られたまま、誰とも仲よくなんかなれない。だから中学に入ってかなりがんばったんだ。こっちから話しかけたり、ひとに共感されやすい話題をふったり、話しやすい雰囲気を心がけたり、傾聴の本とか読んだり……」
(ま、真面目……。それほど本気だったんだ)
佐藤くんのコミュ力や押しの強さはそうやって身につけた努力のたまものだったのだ。
「自分の世界を変えたくて、らしくないことした。ほんとうのオレはただの根暗の引きこもりだよ」
「だったら大成功だね」
「え?」
下を向いていた佐藤くんがぱっと顔を上げる。


