――その日の夜。わたしはクッションに顔を埋めながら双葉の言葉を思い出していた。
『超でかい華道のお家元だし』
(一方的に家のこととか知っちゃうの、よくなかったかな……)
わたしたちは話すようになってから日が浅い。だから互いの情報を本人からでなく周りから知ることがあるのは仕方のないことだ。
「ただいまー! ごめん千花遅くなったわあ。お腹空いたでしょ」
「あ、お母さんおかえりなさい。おみそ汁あっためるから先お風呂入ってきて」
「ううっなんてできた娘……!」
お母さんはわたしを大げさにハグしてお風呂場に消えていく。
わたしは日に焼けた畳を踏んで、狭いキッチンに立つ。
母娘、古いアパートに二人暮らし。節約のためにキッチンの灯りはつけずに、窓から差し込む月の光の中でみそ汁をあたためる。


