佐藤くんの両頬をむぎゅっと挟んで黙らせる。ひなたは一瞬目を見開いてから、小さな声で続けた。
「え、でも千花ちゃんは先輩が……」
「ちかちゃんの本命はずっとオレですが!」
「あー!! うそうそうそひなた信じないで! 先輩のこと待ってるんだよね? もうすぐ来ると思うから、それじゃあね!」
「う、うん。バイバイ」
言いたい放題の佐藤くんをズルズル引っぱりながらわたしはその場を後にした。
チッ…………
(え?)
背後から舌打ちのような音が聞こえた、ような気がした。しかし振り返ってもそこにはこちらに笑顔で手を振るひなたしかいない。
(気のせいだよね)
首を傾げるわたしを佐藤くんがじっと見ていたことには気がつかなかった。


