もしわたしがスポーツ推薦で進学したら謙信とは離れてしまうだろう。当然、いまよりもっと会う時間も減る。そんな中ですてきな人と新しい出会いがあったら。
そう考えるだけで落ち込んでしまう。
(いっそ、ここで二人きりで時間が止まればいいのに)
わたしは歩みを止めて近くのバラに語りかけるように口を開いた。
「謙信は、変わったよね」
「オレ? なにも変わらないよ」
「嘘。だって、どんどんかっこよくなってる。謙信が自分を変えるために努力できる人だって知ってるんだから。さっきだって少し目を離しただけで女の子に声かけられて。これから先、かわいくて好みの子に告白とかされるんじゃないかって。そしたらわたし……振られちゃうんじゃないかって、思って」
声が震えないようにがんばったはずなのに、最後の方はほとんど意味がなかった。
謙信はしばらく黙っていて、それからわたしの髪から頬をなぞるように優しく撫でた。
困らせてしまっただろうか。謝ろうとすると、視界に影がかかる。
その瞬間、ふと口が柔らかく塞がれた。


