「もしかしてオレが浮気するとでも?」
「ううん! まさか。ただその、彼氏がナンパされてるのを目の当たりにするとさすがに……動揺、した」
まだうるさい心臓のあたりを片手で抑える。謙信はそんなわたしの手に指を絡めて、耳元で囁くように言った。
「じゃあちゃんとそばにいて。ね?」
「――うん」
わたしたちはそのまま手を繋いでローズトンネルに入る。はしゃいで喜ぶと思っていた謙信は存外落ち着いていて、目を細めてわたしを見つめていた。
通路から少し外れたトンネルの窪みで、頭上のバラを眺めながらその香りを胸いっぱいに吸い込む。
「はい。ここで質問タイム」
「ん?」
謙信が突然そう言い出したと思ったら、そっと謙信の方に肩を寄せられる。
「千花は最近なにか悩んでない?」
「えっなんで」
「だって考えごと多いし」
(悩みというか、そりゃあたくさん考えることはあるけど)
一番考えてしまうのはやっぱり謙信とのことだ。さっきのナンパだってそう。謙信に好かれているのは分かっているけれど、それが終わってしまう日が怖い。
(いつまでこんなしあわせが続くんだろう、とか)


