シュガーコート



(あ、なんだ……写真頼まれただけか)

 わたしは大げさに脱力して謙信の元へと向かう。すると、写真を撮り終えた後も会話を続けていた謙信が、わたしに気づいて笑顔でこちらに駆け寄ってきた。

「すみません。いまデート中なので」

 謙信は女の子たちにそう言ってから、ごく自然にわたしの肩をそっと抱いてその場を去った。

 わたしはというとまずスマートに肩に回された手にギョッとして、それからカチンコチンになったまま謙信に連れられていくだけだった。

「もー、千花! 黙って置いていかないでよー」

「ご、こめん。あっちの人だかりが気になっちゃって。それに集中してたみたいだから……」

「あー、ごめん! うん、そうだよな。せっかくのデートなのに、千花を視界から外すなんてオレがまちがってた」

「いやいや。せっかくお花を見に来たんだし。……さっきの人たちになに言われてたの?」

 すみません。と断るからにはなにかしらの提案があったはずだ。謙信はなんでもない様子でその問いに答える。

「ああ。写真頼まれて、ひとりなら一緒に回らないかって誘われたんだ」

「そ、そっか」

 つまりはあからさまなナンパだったらしい。少し目を離した隙にこれだ。わたしはどこを見ていいか迷って視線をさまよわせる。

 謙信はそんなわたしを見て、肩に回していた手を下ろしてわたしの手を強く握った。