シュガーコート



 わたしは謙信の手を指の先でちょんと握った。その指はすぐに大きな手に包みこまれる。

「なに考えてるの?」

「謙信のこと」

「…………ハグしていい?」

「ここではダメ!」

 そう、こうやって楽しい思い出をたくさん作ろう。そうしたらきっと不安を思い出がかき消してくれるはず。

(いまさらわたしたちの未来が不安だなんて言ったら、きっと謙信の方が真っ青になっちゃう)

 電車に揺られて数駅、それから少し歩いて着いたのは、春バラが咲き誇るローズガーデンだ。まだ入り口だというのにバラのいい香りがただよっている。

「わあ……!」と感嘆の声が謙信と重なる。お互い顔を見合わせて笑った後、逸る気持ちを抑えながら早足で入場門へと進む。

 色とりどりのバラが飾り付けられた門を抜け、わたしたちは手を繋いだまま入場受付を済ませた。

 満開の香りを胸いっぱいに吸いながら、看板に示された通路に沿って進む。赤、ピンク、白。様々な種類のバラが咲き誇る庭園を二人でゆっくりと歩く。

「すごいや。見たことのない種類のバラがたくさんある」

「うん、それにすっごくいいにおい。癒されるね」

 謙信が時折しゃがみ込んで珍しいバラを観察のを、わたしは穏やかな気持ちで見つめる。