シュガーコート



「亜矢はいいの? 例の推しピは」

 双葉の出した話題にわたしはピクリと耳を傾ける。

 藤井くんに告白されたことはこの二人にも言えていない。特に亜矢には。

 藤井くんの視線はまだ感じるし、なるべく意識しないようにしているけれどときどき怖くなることもあって。一方的に自分に向けられる視線から逃げ出したくなるときもある。

 そういうときは謙信の言葉を信じて自分を奮い立たせている。

 謙信がいる。守ってくれる。そばにいてくれる。だから大丈夫。

「あー。まあ別にいいかなって感じ。高校で新しい推し探すわ」

 あっけらかんとしてジュースをかき混ぜる亜矢に双葉が頷く。

「いいんじゃない。あいつ性格悪いし」

「そ、そうなんだ」

 謙信も似たようなことを言っていた気がする。亜矢が冷めてくれて内心ホッとしている自分がいた。

「二人に好きな人できたら全面協力するから」

「じゃあイケメン紹介してくれー」

「千花こそデートどうだったかちゃんと報告してよね」

 二人の返事に苦笑しながら、わたしは心の中で感謝する。

(ありがとう、二人とも。卒業してもずっと友達だよ)