亜矢がジッとこちらを見ていることに気づき、わたしはオレンジジュースをストローで飲みながら視線を返した。
「リップ」
「え?」
「あー分かる」
わたしの顔面を見つめる亜矢が出した単語に双葉が頷く。
「千花は顔面強いからほんのり色があればよりいいかな」
「じゃあこれは? はつ恋リップ。うちのお姉ちゃんが持ってるんだけどいい感じだよ」
双葉がスマホ画面に映したのは、中高生人気ナンバーワンとあおり文がついた色つきのリップバームだった。
(ちょっとかわいいかも……)
すぐそこのバラエティーショップに売っていそうだ。わたしは自分のくちびるに触れてからこくりとひとつ頷いた。
「そういえば千花ってつき合う前から手繋いだりハグしたりしてるのにキスはまだなの?」
「だっ! だからそれは!!」
亜矢の直球な台詞にわたしは思わずフライドポテトを取り落とす。双葉はシェーキを飲みながら笑いすぎてむせていた。
こうして信頼している友達と一緒にいると、ふとひなたのことが頭によぎることがある。
ひなたとわたしは宣言どおり友達おやすみ中。クラスも違うからあまり会わない。
廊下ですれ違いもしないのは、向こうがわたしを避けているのかもしれなかった。
そして、風の噂でひなたと玉之江先輩が別れたと聞いた。


