シュガーコート



「あはは。間に合った! じゃあね!」

 本鈴が鳴る数秒前。オレたちは教室の前で別れた。肩で息をするオレをクラスメイトたちが目を丸くして見る。

「佐藤だっけ? ギッリギリだな」

 前の席に座る名前も知らない男子が珍しそうに話しかけてきたのを、オレは驚きながら見返した。

「あ、うん……あの、おはよう」

「おー、おはよう。部活決めた?」

 なんでもないように交わされる言葉に、自然と目の奥がジンと熱くなる。

 小学校ではうまくいかなかったけれど。いまからやり直せる。ここにはオレのことを知らない人がたくさんいるのだ。

 次の日からオレは学校へ行くことが苦ではなくなっていた。

 長かった前髪を切り、なるべくたくさんの人に自己紹介した。自分を知ってもらえば会話も広がる。

 そんな中、あの日オレの背中を押してくれた彼女の名前を知った。

(北田千花。女子バレー部所属……)

 あとはもう、知ってのとおり。気づけば恋に落ちていた。