シュガーコート



 彼女は嬉しそうに笑い、あろうことかオレの背中をバシンと押して言ったのだ。

「行こっ」

 そのなんの含みもない笑顔に、鉛のようだったオレの体が一気に軽くなる。

 一歩、二歩、足を進めるうちに、ドタバタと前を走る彼女についていくために足が勝手に走りだす。

「朝起きたらお母さんが熱出しててさあ。色々してたら遅くなっちゃった。入学早々遅刻とかねえ」

「じ、事情があるんだからっ先生に言えば……」

「ちがうちがう! もったいないじゃん」

(もったいない?)

 猛スピードで走る彼女についていくだけで精一杯で、オレは疑問を投げることもできない。

 あっという間にげた箱にたどり着き、彼女は勢いのまま靴をそこらへんに脱ぎ捨て、上履きを引っ掴んで靴下のまま校内を走りだす。

 まるでレーシングカーだ。もしくはバズーカ。オレは一瞬ポカンとして、慌てて彼女と同じようにした。