シュガーコート



 空気を震わせるように予鈴が鳴った。あと五分で学校が始まってしまうというのに、オレはその場から動けない。

(嫌だ。帰りたい。嫌だ嫌だ嫌だ。帰る? 一体どこへ。家に帰ったところでオレの味方はいない)

 いっそこのまま消えてしまえたら、とまで考えたそのときだった。

「遅刻ーーーっ!!」

 歩道の横の植え込みから突然女子生徒が飛び出してきたのは。

 スローモーションのように、目が合う。

 その凛とした目に前髪で隠した自分の目を見られてギクリとした。

「あ」

 彼女はオレの存在に気づいて目を丸くする。

 スローモーションが終わり、ぶつかりそうになるのをお互いすんでのところで回避した。

「うわっごめんなさい!」

 頭に葉っぱを乗せながらその女子はぺこりと謝ってくる。オレはまだ呆然としていて反応することができなかった。

「新入生ですか?」

「あ、うん……」

「ラッキー! 遅刻ギリギリ仲間発見!」