シュガーコート



「おはよう謙信。ちゃんと勉強してくるのよ」

 のろのろと居間に向かうと、訪問着を着付けた母親が玄関から声をかけてきた。

「おはよう母さん。分かってるよ」

「あとその前髪、いい加減切るか上げるかしなさい。うっとうしい」

 母はオレが中学受験に失敗してからより目付き鋭くオレを見るようになった。特に勉学を怠ると見るや否や大声を出して叱りつけてくる。

 多忙な父は家に帰ってこない。

(なんか、ジンセイってこんなもんなのかな。なにも楽しいことないや)

 雲の浮く空を眺めながら重い足を引きずるように登校する。

 同じ制服を着た近所の同級生がオレの姿を見てあからさまに距離を取って歩く。

 小学校となにも変わらない現実が、ついにオレの歩む力を奪っていく。

 学校まで三、四分といったところでオレの足が止まった。そこで永遠にも感じる時間ずっと立ちすくむ。

 オレの後ろを歩いていた生徒たちは不思議な顔をしながら次々とオレを追い抜かしていった。

 嫌なイメージがぐるぐる頭をかけ巡る。

 またオレは周囲に馴染めず終わるのか。