「でも、いままでのひなた全部が嫌いなわけじゃない。だからいつか、きっとまた友達になろう」
ちかちゃんは改めて彼女に傘を握らせる。
不思議な光景だった。
オレがあんなに怒り狂った相手にさえちかちゃんは優しい。優しく、丁寧に突き放す。
この二人がいつかまた友達になる日が来るのなら、それはちかちゃんが彼女を許し受け入れたということ。そこでオレが文句を言う筋合いはない。
彼女はふらりと立ち上がってちかちゃんに背を向けた。そしてゆっくりと歩き出す。
「先輩と、お幸せにね」
ちかちゃんのその言葉に彼女は一瞬足を止め、しかし振り返らずにその場から去って行った。
ぴちゃん、ぴちゃんと屋根から水滴が落ちる。
オレとちかちゃんはびしょ濡れのまま顔を見合わせ、緊張の糸が切れたように笑顔を向け合った。


